第19回分子生命科学セミナー(重点医療研究セミナー,大学院特別講義)

演題:立体構造からアプローチする「アレルゲンとは何か」
演者:畠中 秀樹(九州大学大学院システム生命科学府特付助教授)
日時:平成15年12月15日(月)17:30〜18:30
場所:臨床小講堂2(3114)

講演要旨

食物や花粉がそれぞれ多種多様な蛋白質を含んでいるにも関わらず、なぜ一部の蛋白 質だけが強いアレルゲン性を示すのかについては、未だに良くわかっていない。
 我々はダニアレルゲンDer f 2の立体構造を決定した際に、結果の構造などからDer f 2がダニの先天性免疫に関与していると推定し、実際に大腸菌表面に結合すること を見出した1)。その後Der f 2は、哺乳類の先天性免疫の重要因子でリポ多糖を結合 するMD2などとともに、脂質結合蛋白質のスーパーファミリーを成すことが報告され た2)。実際、類縁のダニアレルゲンDer p 2の結晶構造では、驚くべきことに2枚の βシートの間が開いて、間に2本の脂肪鎖らしき電子密度が見つかっている3)。この スーパーファミリーのメンバーの構造は、βサンドイッチ構造からβカップ構造4)に 至るまで脂質を結合するβシート間の広さに違いがあり、同じフォールドとは認識で きないほどである。
 一般に、アレルゲンの立体構造や2次構造的特徴は非常に多様であり、共通点を見 出すのは困難である。しかし機能的には、アレルゲンには生体防御関連蛋白質や脂質 結合蛋白質が多い。このことがアレルゲン性と関連しているかどうかはわからないが、 私は関心を持っている。

参考文献

1) Ichikawa, S. et al. (1998) J. Biol. Chem. 273, 356-360.
2) Inohara, N. & Nunez G. (2002) Trends Biochem. Sci. 27, 219-221.
3) Derewenda, U. et al. (2002) J. Mol. Biol. 318, 189-197.
4) Wright, C.S. et al. (2000) J. Mol. Biol. 304, 411-422.


セミナーに関する問い合わせ:分子生命科学講座・出原(内線2261)



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